任意整理は弁護士や司法書士に依頼し債権者との間で利息のカットや債務額の減額、分割弁済の協議を行ってもらう債務整理手続きの一種です。
裁判所に申し立てが必要となる自己破産や個人再生の手続きと異なり、債権者と個別に協議をすることができますから、簡易迅速な処理が望めるのが大きな特徴といえます。
このように、任意整理の手続きは債権者との間で借金の返済に関する「示談交渉」をするだけのことにすぎませんから、会社員やアルバイトなどだけでなく、個人事業主であっても利用することが可能です。
ただし、個人事業主が借入をする場合には、サラリーマンやパート労働者などとは異なり、その借入金額も大きくなり、保証人などが関与する場合も有るため特別な注意を払う必要があります。
金額が大きい場合はそもそも任意整理が不適当な場合もある
個人事業主の借り入れは事業資金が主な場合が多いことから、会社員などと比較してその借入金額も高額になりがちです。
この点、任意整理の手続きは残存債務額から”経過利息”と”将来利息”を除いた”借入元本”だけを原則36回の分割払いで返済するのが基本的な処理方法となりますから、借入金額が大きい場合にはそもそも任意整理で処理しきれないケースもあるかもしれません。
たとえば、500万円の事業資金を借り入れて200万円返済したところで弁済に窮し任意整理する場合には利息のカットができたとしても最低300万円は返済が必要となりますから、毎月8~9万円を3年間にわたって返済しなければならなくなってしまうでしょう。
もちろん、このような場合であっても毎月8~9万円を返済できる家計の余裕があれば任意整理は可能ですが、毎月の収入から生活費を差し引いた毎月の余剰金が少なくとも15~20万円程度なければ毎月8~9万円を余裕をもって返済することは厳しいでしょうから、よほど安定した収入が見込める職種でない限り不可能でしょう。
仮に毎月の収入に幅があり、毎月安定した収入が確保できない事業主であれば、そもそも任意整理で36回という長期の分割弁済計画を組むこと自体できませんから、最初から自己破産や個人再生(※個人再生では原則として債務が5分の1に圧縮されます)する方が無難です。
このように、個人事業主の場合には借入額が高額になっていることが多いため、任意整理の手続き自体が適当でないと判断される場合も有りますので、弁護士や司法書士の助言を真摯に受け止め、任意整理が無理な場合には個人再生や自己破産に手続きを切り替える勇気も必要となるのではないかと思います。
保証人に請求がなされる可能性
また、個人事業主が任意整理する場合には、保証人に請求がなされることが多い点にも気を配る必要があります。
前述したように、個人事業主の借り入れは事業資金がその主なものとなりますから、どうしても借入額が高額になる傾向があります。
借入金額が大きくなると当然、債権者側としても保証人を付けることを要求しますから、個人事業主の人が借り入れている借金には保証人が付けられているものが多くあるのが実情です。
この点、保証人が付いた借金を任意整理の手続きで処理しようとすると、保証人の方に「主たる債務者が任意整理して支払いを拒否してるから保証人さんの方で返済してもらえますか?」という連絡がなされる可能性があります。
ですから、自営業者が任意整理をする場合には、その任意整理の対象とする債務に保証人がつけられていないか十分に確認を取っておくことが必要です。
仮に保証人がつけられていることを忘れたまま任意整理の手続きを進めてしまった場合には、債権者から保証人に突然請求がなされて保証人になってくれている人が思わぬ不利益を受けてしまう恐れもありますので、保証人が付いているかいないかをよく確認し、保証人が付いている債務については事前に保証人に事情を説明しておくなど十分な注意が必要といえます。