結婚を考える相手ができた場合、その婚約者がどのような経済的価値観を持っているかという点は、結婚するうえで重要な要素の一つとなります。
もし仮に結婚した相手が金銭感覚の欠落した駄目男(女)であった場合には、いくら高額な年収を稼いでいても、瞬く間に家計が破綻して多重債務に陥ってしまうことは容易に予測できるからです。
しかし、消費者金融だけでなく銀行までも積極的にカードローンを勧誘するようになってしまった21世紀における貸金天国日本では、もはや借金が全くない結婚相手に巡り合える可能性は限りなくゼロに近いかもしれません。
そこで気になるのが、もし仮に借金を抱えた人と結婚してしまった場合、その結婚相手が結婚前に作った借金は、夫婦の借金として夫婦が共同して返済しなけれならないのかといった点です。
結婚前に作った借金なら、その借金を作った相手方が責任をもって返済するのが筋だと思いますが、結婚するということは家計を一つにするということですから、結婚相手となった自分もその借金を負担しなければならないのではないかとも考えられます。
では、結婚相手が結婚前に作った借金は、結婚した夫婦のもう一方も支払う義務を負わなければならないのでしょうか?
借金のある人と結婚した場合であっても自分がその借金を負担する義務はない
結論からいうと、結婚した相手が作った借金については、その借金を作ったのが結婚前であろうと結婚後であろうと、もう一方の配偶者(夫・妻)に返済の義務は発生しません。
たとえば、AさんがBさんと結婚した場合において、Bさんが結婚前にX銀行から100万円を借りていたとしても、AさんはそのX銀行からの100万円については一切返済する義務を負いませんし、仮にBさんがX銀行から100万円を借りたのが結婚後であったとしても、Aさんにその借金を返済しなければならない義務が発生することはないのです。
なぜこのような結論になるかというと、日本には結婚相手の負債を引き継がなければならないと定めた法律がないからです。
借金の貸し借りという契約関係は、そのお金を貸した「債権者」とお金を借りた「債務者」との2者の間で発生するのであって、「その債務者と結婚した配偶者(夫・妻)」と「債権者」の間には何らの金銭の貸し借りの契約関係は生じませんから、たとえ結婚相手に借金があったとしても、お金を借りていない自分に返済しなければならない義務は発生しないのです。
借金を抱えた結婚相手が死亡すれば借金を相続する
前述したように、借金を抱えた人と結婚したとしても、その借金を自分が返済しなければならないことにはなりませんが、例外もあります。
それは、その借金を抱えた結婚相手が亡くなった場合です。
配偶者(夫・妻)が亡くなると、その亡くなった配偶者(夫・妻)の「資産」が相続人に相続されることになりますが、その相続される「資産」には「負の資産」となる借金もふくまれることになります。
そのため、借金を抱えた配偶者(夫・妻)が亡くなった場合には、その配偶者である自分が相続人としてその借金を相続してしまうことになりますから、相続した以降はその借金を返済する法律上の義務が生じることになります。
なお、このように配偶者(夫・妻)の借金を相続したくない場合は相続放棄の手続きか限定承認の手続きを家庭裁判所に申し立てしなければなりませんので、亡くなった配偶者(夫・妻)に借金がある場合、もしくは借金があると疑われる場合には、配偶者(夫・妻)が亡くなった後、速やかに弁護士や司法書士に相談し、適切な対処を取ることが必要となります。