任意整理すると賃貸契約できなくなる?

弁護士や司法書士に代理人になってもらい、借金の債権者との間で債務の減額や利息のカット、分割弁済の協議を行ってもらう手続きを「任意整理」といいます。

任意整理は弁護士や司法書士に支払う報酬が発生しますが、自己破産や個人再生等の手続きと異なり裁判所に申し立てが必要ないことから、簡易迅速で費用的にも安価に処理できる債務整理方法として多くの多重債務者が利用している手続となります。

ところで、任意整理の手続きにより債権者との間で債務の減額や長期の分割弁済等の協議を行うことは契約通りの返済や利息の支払いをしないということになりますので、「延滞」扱いとなる結果、信用情報機関に「事故情報」として登録されてしまうことはどうしても避けられません。

▶ 任意整理した場合のデメリットとは?

いわゆる「ブラックリストに載ってしまう」ということになるのですが、このように信用情報機関に登録されてしまう(ブラックリスリストに載ってしまう)ことで懸念されるのが、任意整理した後に賃貸マンションや賃貸アパートの入居ができなくなるのではないか、という点です。

賃貸マンションやアパートを貸す側の大屋さんにしてみれば、借金の返済ができないような人に部屋を貸すのはリスクが高いと考えでしょうから、任意整理した場合には賃貸契約に何らかの影響が出てしまうのではないか、という点は非常に気になるところです。

では、任意整理で借金を処理した場合、賃貸借契約には何らかの影響が発生してしまうのでしょうか?

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賃貸マンションやアパートの契約自体はできる

前述したように、任意整理した場合に賃貸マンションや賃貸アパートなどの契約ができなくなるのではないか、という疑問が生じますが、結論からいうと任意整理を行っても基本的に賃貸契約に影響は生じないのが原則的な取り扱いとなります。

任意整理をしたとしても、今住んでいる賃貸物件から退去を求められることはありませんし、任意整理後に新しく賃貸マンションや賃貸アパートに入居しようとした場合に、過去に任意整理したことが影響して契約を拒否されるということもありません。

なぜなら、貸金業者やクレジット会社、銀行などの金融機関からお金を借りるという「金銭消費貸借契約」と、賃貸マンションや賃貸アパートなどを借りる「賃貸借契約」は、その法律上の性質が全く異なる契約になるため、「金銭消費貸借契約」で発生した「延滞」の事故情報は「賃貸契約」における信用情報に全く関係しないからです。

前述したように、任意整理で借金を処理した場合には信用情報機関に事故情報に登録されることになりますが、その登録の対象となる信用情報機関は消費者金融などの貸金業者やクレジット会社からの借り入れについては「JICC」「CIC」、銀行からの借り入れについては「全国銀行協会」に限られることになります。

また、これら「JICC」「CIC」「全国銀行協会」に加盟できるのは貸金業者やクレジット会社、銀行などに限られ、一般の賃貸マンションや賃貸アパートの大屋さんや不動産の仲介業者は加盟することができませんから、当然賃貸マンションや賃貸アパートの大屋さんや不動産業者は「JICC」「CIC」「全国銀行協会」に登録されている事故情報に一切照会を掛けることができません。

したがって、仮に任意整理することによって「JICC」「CIC」「全国銀行協会」という信用情報機関に事故情報が登録されたとしても、その事故情報が賃貸物件の大屋さんや不動産仲介業者に知られてしまうことはありませんから、任意整理をしても賃貸マンションや賃貸アパートの契約には全く影響がないということになります。

保証会社に保証人になってもらう場合は賃貸契約ができない場合もある

前述したように、任意整理をした場合には信用情報機関に事故情報として登録されますが、賃貸マンションや賃貸アパートの大屋さんや不動産仲介業者はその信用情報機関にアクセスすることができませんので、任意整理したとしても賃貸物件の契約ができなくなるようなことは原則としてありません。

しかし、例外として賃貸物件の契約の際に家賃の保証人に保証会社を付けることが義務付けられる場合には、賃貸契約ができない場合があります。

なぜなら、賃貸マンションや賃貸アパートの契約で保証会社を付けなければならない場合には、その保証会社と保証委託契約を結ぶ際に、保証会社から前述した信用情報機関に事故情報の照会がなされることがあるからです。

この点、賃貸契約の保証会社には「信販会社系の保証会社」と「信販会社系以外の保証会社」がありますが、「信販会社系以外の保証会社」が賃貸契約に関与する場合には、前述した信用情報機関に事故情報を照会することはできないので賃貸契約に影響が出ることはありません。

しかし、「信販会社系以外の保証会社」(※たとえばオリコとかアプラスとか)が賃貸契約の保証会社に指定される場合には、その保証会社の方から前述した信用情報機関に事故情報の照会がなされることになりますので、過去の任意整理の事故情報が知られることになる結果、保証会社の審査で落とされることになり、賃貸物件の契約も通らないことになるのが通常です。

 

このように、賃貸マンションや賃貸アパートの契約であっても、その賃貸契約に保証人として保証会社を関与させることが家主や不動産仲介業者から義務付けられていて、かつ、その保証会社が信販会社系の保証会社であるような場合には、信用情報機関に事故情報の照会がされて保証会社の審査が通らずに賃貸契約も拒否される場合があるので注意が必要でしょう。