自己破産は、債務者が負担している債務(借金)の返済義務を裁判所から法的に免除してもらうための手続きですが、自己破産の申し立ても裁判所で取り扱われる「裁判」の一種である以上、裁判官の判断によっては「敗訴」してしまうこともないわけではありません。
自己破産の手続きにおける「敗訴」とは「免責」が「不許可」になること、すなわちそれは借金の返済義務が免除されないことを意味します。
裁判所から免責不許可の決定が出されれば当然、その負担している債務の返済義務は免除されないことになりますから、それまで発生した債務についてはその全額を働いて返済しなければならないことになります。
では、実際に自己破産の手続きで裁判所から免責不許可の決定が出されてしまった場合、具体的にどのような対処を取ることができるのでしょうか?
裁判官の判断で免責が不許可とされてしまった場合には、何の対処も取れずにただ返済を続けることを強制させられてしまうのでしょうか?
免責不許可の決定に対しては即時抗告で異議申し立てができる
自己破産の申し立てを行って裁判所から免責を不許可とする決定が出されてしまった場合には、裁判所に対して「即時抗告」をすることができます。
【破産法252条2項】
免責許可の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
即時抗告とは、通常の裁判における「控訴」と同じような位置づけの手続きで、裁判所の判断に不服がある場合に異議を出す場合の手続きのことをいいます。
自己破産の手続きで裁判官が「免責不許可」の判断をしたとしても、裁判官も人間ですから、その判断を誤ってしまう可能性も否定できません。
そのため、破産法では「即時抗告」という申立人からの異議申し立てを認めることで、破産手続きの正確性を担保しているのです。
仮に裁判官の判断で「免責」が「不許可」とされた場合であっても、申立人から「即時抗告」の申し立てを行い、その「即時抗告」の手続きで自分の主張が認められれば「免責」は「許可」されることになりますから、「裁判官の判断は間違ってるから免責を許可しろ!」と審理のやり直しをしてもらうことは可能であるということができます。
もっとも、実際に即時抗告が必要になることはない
このように、仮に自己破産の手続きで裁判官が「免責」を「不許可」にしたとしても「即時抗告」という不服申し立ての手段が法定されていますから、その「即時抗告」を申し立てることで最終的に「免責」を「許可」してもらうことは可能といえます。
もっとも、実際の自己破産の手続きで裁判所に「即時抗告」を申し立てることは99.99…%ありません。
なぜなら、自己破産の手続きで裁判官が「免責不許可」の決定を出すこと自体、通常はありえないからです。
自己破産の手続きは、多額の負債を抱えた債務者を救済するための最後の法的手段となりますから、自己破産の手続きが裁判所に申し立てられた場合は裁判官は「できる限り免責を認めよう」という意思をもって手続きを進行してゆきます。
仮に裁判官が免責を認めず不許可にしてしまったら、「払えないものは払えない」ことに変わりないわけですから借金の返済ができない債務者が路頭に迷うだけであり、社会的に何の解決もされないからです。
裁判官の判断で「免責不許可」を出すのは簡単ですが、仮に「免責」を「不許可」としてしまうと、返済できない借金を抱えた人間が社会に放たれるだけであって、何らかのきっかけで自暴自棄になり犯罪などに走る危険性もあります。
そうなると、「免責の不許可」は単に社会不安を増大させる結果を生み出すことになりかねないわけですから、社会全体の安定を考えると、どんな債務者であっても自己破産が申し立てられれば最終的に「免責」を「許可」してやるしかありません。
ですから、自己破産の手続きが裁判所に申し立てられた場合は、裁判官は基本的にすべての案件について「免責」を「許可」する方向で審理を進めるわけです。
もちろん、ギャンブルなどの射幸行為や、風俗や遊興費などの浪費が激しい場合には、裁判所から一定額の積み立てが支持されたり、厳しい調査や報告義務が課されることはあります。
しかし、それでも最終的には裁判官は「免責」を「許可」してあげようとしますので、実際に「免責」が「不許可」とされてしまうケースは限りなく「ゼロ」に近いといえるのです。
このように、実際の自己破産の手続きで「免責」が「不許可」にされてしまうケースは99.99999……%ありませんから、実際に「即時抗告」が必要になる場面も99.999999…….%ないということが言えます。
「免責が不許可になったらどうしよう」と考えること自体が無駄
以上のように、実際の自己破産の手続きではほぼすべての案件で「免責」が「許可」されるのが通常で、「免責不許可」になるケースは99.99999%ありえないのですから、「免責が不許可になったらどうしよう」と考えること自体が「無駄」といえます。
実際の手続きで免責が不許可になることはありえないわけですから「免責が不許可になったらどうしよう」と不安になること自体、「隕石が落ちてきて頭に当たったらどうしよう」と考えるのと同じくらい無駄なことなのです。
もちろん、最初から返すつもりがないのに多額のお金をだまし取ったような明らかな「詐欺」のケースであれば免責不許可の決定がなされることもあるかもしれませんが、普通に借金をして返せなくなったケースで免責が不許可になることはありません。
わたしが過去に処理した事案でも、借り入れのほとんどがパチンコや風俗などで免責不許可事由だらけの案件もありましたが、そのようなケースでも最終的には免責の許可は下りています。
ですから、実際の手続きで免責が「不許可」になることはありえませんので、「免責が不許可になったらどうしよう」などと無駄な心配で頭を悩ませるのではなく、借金の返済が滞った時点で早めに弁護士や司法書士に相談し、適切な対処を取ることが必要といえるのです。