任意整理は弁護士や司法書士が代理人となって債権者と交渉し、利息のカットや債務額の減額、分血便際の和解を取り付ける債務整理の手続きの一種です。
自己破産や個人再生、特定調停などの手続きと異なり、裁判所に申し立てをしないで済むことから、簡易迅速で費用的に安く借金の処理ができる点が任意整理の大きな特徴といえます。
ところで、任意整理にはこのようなメリットがあることから債務整理の手続きでも幅広い多重債務者の人に利用されているようですが、公務員の人が任意整理をする場合には若干の注意が必要です。
なぜなら、公務員の人は共済組合から借り入れしている人が多いため、その共済組合からの借り入れまで任意整理をしてしまうと、勤務先の職場に任意整理をしていることがバレてしまう可能性があるからです。
共済組合からの借り入れを任意整理してしまうと勤務先にバレてしまう理由
多重債務に陥っている人が公務員の場合には、そのほとんどの人が共済組合から借り入れをしているのではないかと思います。
共済組合は借入額に制限がありますが、消費者金融やクレジット会社などより貸付利率が低いのが一般的ですので、まず共済組合から借り入れをして、それでも足りなくなった資金を消費者金融やクレジット会社で穴埋めするというのが公務員が借金地獄に陥る一般的なパターンだからです。
この共済組合からの借り入れについても、他の消費者金融などの貸金業者やクレジット会社からの借り入れと同様に、任意整理の対象として処理することが可能です。
共済組合からの借入であっても、それが借金である以上、弁護士や司法書士が間に入って任意整理の交渉を行い、利息のカットや債務額の減額、分割払いの話し合いをすることは差し支えないからです。
もっとも、共済組合からの借り入れを任意整理する場合には、勤務先の職場に任意整理をしていることが知られてしまう可能性があります。
なぜなら、共済組合からの借り入れ金の返済は、毎月の給与から控除(天引き)されるのが一般的になっているため、任意整理の手続きで弁護士や司法書士が介入すれば債務額の確定と示談交渉のためその共済組合への返済が一時的に中断されることになりますが、そうなると当然、給与からの返済額の控除(天引き)も中断させる必要性が生じるため、勤務先の職場で給与の計算をしている経理部に何らかの通知がなされる可能性があるからです。
経理部に何らかの通知が行ったとしても、それによって任意整理をしていることが職場全体に知られてしまうということはないかもしれませんが、共済組合からの借り入れを任意整理する場合にはこのように職場に知られてしまうリスクがあるということは認識しておいた方が良いのではないかと思います。
公務員が任意整理する際に勤務先にバレないようにするためには?
上記のように、共済組合からの借り入れをしている公務員の人が、その共済組合からの借り入れを任意整理する場合には、共済組合への返済が給与からの控除(天引き)になっている事情から勤務先の職場に任意整理をしていることが知られてしまう可能性があります。
これを回避するには、共済組合からの借り入れを任意整理の手続きから除外するしかありません。
任意整理の手続きは自己破産や個人再生などの手続きと異なり、法律で定められた法定の手続きではありませんから、全ての債権者を任意整理の手続きに含める必要はなく、特定の債権者を任意整理の手続きから除外して処理することも可能です。
そのため、共済組合からの借り入れだけを任意整理の手続きから除外して処理を行ってもまったく差し支えないのです。
ただし、弁護士や司法書士には共済組合からの借り入れがあることも申告すること
前述したように、共済組合からの借り入れがある場合には、その共済組合からの借り入れだけを任意整理の手続きから除外すれば、勤務先の職場に任意整理をしていることが知られてしまうこともないと思われます。
もっとも、これは何も、弁護士や司法書士に任意整理を依頼するときに、共済組合から借り入れをしていることを内緒にして依頼しろとアドバイスしているわけではありません。
仮に、勤務先にバレてしまうことを回避するため共済組合からの借り入れを任意整理の手続きから除外したい場合であっても、弁護士や司法書士に任意整理を依頼する場合には、共済組合からの借り入れも含めてすべての借金の存在を明らかにすることが必要です。
なぜなら、弁護士や司法書士に任意整理の交渉を債権者と行う場合には、依頼人である債務者の全ての債務を把握したうえで返済原資を計算し、それぞれの債権者への返済額を決定していかなければならないからです。
共済組合からの借り入れを任意整理の手続きから除外したいからと言って弁護士や司法書士に共済組合からの借金の存在を内緒にしてしまうと、全体の借金の総額を見誤ってしまい他の債権者への返済について無理な弁済計画を作ってしまう危険性がありますから、弁護士や司法書士には共済組合からの借り入れも含めた全ての借金の存在を明らかにしなければならないのです。
ですから、公務員が任意整理をする場合において、共済組合からの借り入れを手続きから除外したい場合には、弁護士や司法書士に任意整理を依頼する際に、共済組合からの借り入れもあること、および、勤務先の職場に知られてしまう恐れがあるため共済組合からの借り入れは任意整理の手続きから除外してもらいたいこと、を伝えて適切な対処をしてもらうことが大切といえます。