自己破産は何回までなら繰り返してできるの?

自己破産を検討している人の中には「自己破産は何回までならすることが可能なのか」という点をやたらと心配する人が意外と多くいます。

一般的な感覚からすると自己破産することなど一生に一度あるかないかの極めて特異な事項と思えるのですが、返済できないほどの借金を抱えてしまうと、そのような特異な事項といえる自己破産の手続きも、人生で何度も利用が危惧される身近なものに感じてしまうのかもしれません。

ところで、このような「自己破産の回数」が許容される範囲を考えた場合、債務者の救済という立場に立てば、何回でも制限なく自己破産を認める必要があることから、そこに回数の制限はされるべきではないといえますから「自己破産は何回でもすることが可能」という結論が導かれることになります。

一方、安易な借金の拡大というモラルハザードの弊害を考える立場にたてば、自己破産の利用は最小限に認められべきという考えに至りますから「自己破産の利用には一定の制限がかけられるべき」という結論が導かれることになるでしょう。

では、実際の手続きでは、自己破産は何回までなら行うことが可能なのでしょうか?

自己破産に回数制限はあるのでしょうか?

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自己破産は何回でもできる

結論から言うと、自己破産の申し立ては、人生のうち何度でも何回でも利用することができます。

なぜなら、自己破産の手続きを定めている破産法という法律では、その申立の回数に制限が設けられていないからです。

法律で制限がかけられていない以上、「支払不能」という申立の要件さえ整えば自己破産の申し立ては裁判所に受理されますし、免責不許可事由がない限り裁判所は免責(借金の返済義務が免除されること)を出さなければ法律違反になってしまいますので、「自己破産は何度でもできる」ということがいえるのです。

ただし、2回目以降の自己破産は破産管財人に厳しくチェックされる

もっとも、だからといって2回3回と繰り返し自己破産することが簡単に認められるかというと、決してそうではありません。

自己破産の申し立てを行う場合、過去に自己破産した事実がないかという点を申立書の記載事項や裁判官の審問で聞かれるのが通常ですので、その際に過去に自己破産していた事実が認められる場合には、その案件は裁判所から厳しくチェックされることになります。

具体的には、初回の申し立てであれば「同時廃止」で処理されるような簡単な案件であっても、2回目3回目の申し立てであるような場合はまず間違いなく「管財事件」と処理されることになりますから、裁判所によって選任される破産管財人によって厳しく申し立て内容をチェックされることは間違いありません。

また、2回目3回目の破産となれば家計管理ができていないことが推定されますので、破産管財人の事務所(破産管財人は管財人名簿に記載された弁護士から選任されるのでその選任された破産管財人の所属する弁護士の事務所)で複数回にわたって家計管理に関する厳しい指導を受けさせられることは避けられないでしょう。

それに、破産管財人が選任される場合には当然、管財費用(引継予納金)として最低でも20万円を納付することが求められますから、費用の面だけを考えても相当な負担を強いられてしまうことになりますから、その甘受しなければならない不利益は相当なものといえます。

このように、自己破産に回数制限はないといっても2回目3回目の自己破産にはそれ相応の厳しい調査や費用負担を求められることは避けられませんから、回数制限がないからといって安易な借入を繰り返すのは止めておいた方が無難でしょう。

7年以内の自己破産は、それ以上により厳しくチェックされる

このように、2回目3回目の自己破産の申し立ては初めて申し立てをするときと比較して厳しく調査がなされるのが通常ですが、前回の自己破産(個人再生の申し立ても含む)から7年が経過する前に再度自己破産の申し立てを行う場合は、より一層厳しい調査がなされることになりますので注意が必要です。

なぜなら、そもそも破産法では「前回の申し立てから7年以内」の自己破産の申し立てがあった場合は免責不許可事由として免責(借金の返済義務が免除されること)を不許可にする取り扱いにしていますので(破産法252条1項10号イ,ロ,ハ)、「前回の申し立てから7年」が経過する「前」に自己破産の申し立てを行う場合には、裁判官が特別に「裁量」によって免責を認める「裁量免責」を受けるしか解決の方法がなくなるからです(破産法252条2項)。

【破産法252条1項及び2項】

1項 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする
一~九 (省略)
十 次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれイからハまでに定める日から七年以内に免責許可の申立てがあったこと
イ 免責許可の決定が確定したこと 当該免責許可の決定の確定の日
ロ 民事再生法(中略)に規定する給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと 当該再生計画認可の決定の確定の日
ハ 民事再生法(中略)に規定する免責の決定が確定したこと 当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日
十一(省略)。

2項 前項の規定にかかわらず、同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。

免責不許可事由に該当する事実がある場合には免責は認められないのが通常ですが、その場合であっても債務者を救済するために特に必要である場合には、裁判官の「裁量」によって特別に免責を認める「裁量免責」が例外的な措置として認められていますので、「前回の申し立てから7年以内」の自己破産が免責不許可事由に該当するとはいっても、「前回の申し立てから7年以内」の自己破産で絶対に免責が認められないわけではありません。

しかし、「裁量免責」はあくまでも例外的な措置になりますので、「前回の申し立てから7年以内」に自己破産を申し立てて「裁量免責」を受けたい場合には、破産管財人のより厳しい調査を受けなければなりませんし、破産管財人のより厳しい指導に従わなければならないでしょう。

ですから、「前回の申し立てから7年」が経過する「前」に自己破産の申し立てを行う場合には、それ相応の事前準備と破産管財人の調査や指導に耐えるための相応の覚悟が必要になりますので、その点を十分に認識したうえで自己破産を検討する必要があるといえます。

最後に

以上のように、自己破産には回数制限は設けられていませんので、基本的には一生のうちで「何回でも」自己破産の手続きで免責を受けることによって借金の返済義務を免除(免責)してもらうことが可能といえますが、実際に2回目3回目の申立てを行う場合にはそれ相応の覚悟が必要になります。

また、自己破産の免責はあくまでも裁判官の判断によってなされるわけですから「何回でも自己破産できる」と安易に考えて借り入れを繰り返すような場合には、裁判官が免責を認めてくれない可能性があるリスクも十分に認識しておくべきでしょう。

そもそも、そのように自己破産しなければならないほど負債を増大させなければよいだけともいえるのですから、返済が困難になった時点で速やかに弁護士や司法書士に相談し、任意整理など自己破産に至らない債務整理方法がないか、早めに検討してもらうことも必要であることは十分に理解しておくべきといえます。