自己破産前にソシャゲでガチャを引くと詐欺破産罪になる?

老若男女問わずスマホを所持する現代社会では、ソシャゲ(ソーシャルゲーム・スマホゲーム)はもはや全国民の必須の「時間つぶしアイテム」として認識されているのではないかと思います。

そんなソシャゲ(ソーシャルゲーム・スマホゲーム)には、消費者を無意識に依存状態にさせたがる「ガチャ」と呼ばれる課金システムが搭載されていますので、気づかない間に多額のガチャを引いてしまい、翌月に思わぬ高額な課金料金を請求されてしまうという”被害事例(?)”も比較的多く見受けられているようです。

ところで、このように老若男女が利用する可能性のあるソシャゲ(ソーシャルゲーム・スマホゲーム)のガチャですが、自己破産しなければならないほど借金の返済に窮している状況にある場合には、その利用を控えた方がよさそうです。

なぜなら、もし仮に自己破産の申立て前にソシャゲ(ソーシャルゲーム・スマホゲーム)でガチャを利用してしまうと、その課金額によっては後で「詐欺破産罪」として刑事責任を問われてしまう可能性があるからです。

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ソシャゲ(課金ゲーム)で「ガチャ」を引く行為は資産(財産)を目減りさせる結果につながる

なぜ課金ゲームで「ガチャ」を利用することが詐欺破産罪の問題を生じさせてしまうかというと、その「ガチャ」を引いて課金する行為自体が、債務者の資産(財産)を目減りさせてしまうことにつながるからです。

自己破産の手続きは借金の返済義務を免除(免責)してもらうことを目的とした手続きですが、それと同時に債務者が保有している資産(財産)と債務者の負担する債務(借金)を清算するための手続きでもありますんで、債務者に一定の資産(財産)がある場合には、自由財産として保有が認められるものを除いてすべて裁判所に取り上げられて債権者への配当に充てられることになるのが原則です。

そうすると、仮に自己破産の申し立てを予定している債務者がいる場合には、その時点で債務者が保有している資産(財産)は「債務者」の資産(財産)ではあるものの「将来的に自己破産が申し立てられた際は債権者への配当に充てられるべき資産(財産)」ということになりますから、債務者の資産(財産)は「債権者の資産(財産)」でもあるということができるでしょう。

このように考えた場合には、その自己破産の申し立てを予定している債務者が、自分の資産だからといって、自分の自由にその資産(財産)を処分してもよいということにはなりません。

なぜなら、それを認めてしまうと、後の自己破産の手続きでその資産(財産)から配当を受けられるべきであった債権者が、その申し立て前の債務者の処分によって、当初見込まれていた配当が受けられなくなってしまうからです。

この点、課金ゲームでガチャを利用することは「債務者の資産(財産)であるお金を支払ってガチャでアイテム等を購入する」ということになるわけですから、その「ガチャで購入した金額」の分だけ、保有している「現金(又は預金)」という資産(財産)が債務者の資産(財産)から目減りしてしまうことにつながります。

そうすると、そのガチャに使った金額分の「債権者の資産(財産)」が減少してしまうということにつながるため、債権者の保護の観点から問題とされることになるのです。

ガチャを利用した課金は、資産(財産)の損壊・減損・処分として詐欺破産罪に該当する可能性がある

以上のように、自己破産の申し立てを予定している債務者がスマホの課金ゲームでガチャを引き、そのガチャで課金した金額分の資産(財産)を減少させてしまった場合には、将来的に自己破産の手続きで債権者への配当に充てられるべきであった資産(財産)を目減りさせてしまったという点が問題にされることになります。

具体的にどのような問題が生じるかというと、このページの冒頭部分でも述べたように、破産法265条1項に規定されている「詐欺破産罪」として刑事責任を問われる犯罪行為として問題を生じさせることになります。

なぜなら、先ほども述べたように課金ゲームでガチャを利用する行為自体が自己破産で債権者への配当に充てられるべきであった資産(財産)を目減りさせてしまうことにつながるため、その「資産を減少させた」という行為自体が、破産法265条1項に挙げられている「財産の損壊」する行為であったり「現状を改変してその価格を減損」する行為であったり、あるいはその財産を「債権者の不利益に処分」する行為に該当し、その条文で規定されている詐欺破産罪の構成要件事実を構成することになってしまうからです(破産法265条1項)。

【破産法265条1項】

破産手続開始の前後を問わず、債権者を害する目的で、次の各号のいずれかに該当する行為をした者は、債務者(中略)について破産手続開始の決定が確定したときは、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。(中略)。
一 債務者の財産(省略)を隠匿し、又は損壊する行為
二 債務者の財産の譲渡又は債務の負担を仮装する行為
三 債務者の財産の現状を改変して、その価格を減損する行為
四 債務者の財産を債権者の不利益に処分し、又は債権者に不利益な債務を債務者が負担する行為

先ほど述べたように、ガチャを利用するして課金すればその分のお金が減少し、債務者の資産(財産)が目減りしてしまうわけですから、その目減りした分だけ債務者の財産であるお金が「損壊」することになりますし、ガチャを利用してアイテム等を購入すれば「お金」という資産(財産)が「ゲーム内のアイテム」に「現状が改変」されてその価格の分だけ債務者の財産であるお金がの「価格が減損」してしまう結果になるでしょう。

また、そのように「ゲーム内のアイテム」を購入すること自体が債務者の資産(財産)であるお金を目減りさせてしまうことにつながり、そのガチャを利用した分だけ債権者の配当金が目減りしてしまうことになるわけですから、それはお金という債務者の資産(財産)を「債権者の不利益に処分」したと判断することが可能です。

このように考えると、課金ゲームでガチャを利用する行為自体が破産法265条1項の詐欺破産罪に当たる可能性は否定できないと考えられるので、自己破産の申し立てを避けられないほど返済に窮している場合には、スマホゲームでガチャを利用し課金することは控えた方がよいという結論になるのです。

最後に

以上のように、自己破産が避けられないほど債務が増大した状態でソシャゲ(ソーシャルゲーム・スマホゲーム)のガチャを引き無駄な課金をしてしまうことは、詐欺破産罪として処罰される危険性があるということも十分に認識しておくべきといえます。

また、仮に詐欺破産罪にあたらないと判断された場合であっても「債権者の配当に充てるべき資産を目減りさせた」という点は変わりないわけですから『課金ゲームでガチャると自己破産の免責が受けられない?』のページで解説しているような免責不許可事由の問題が残りますので、その危険性を考えてもガチャの利用は控えるべきでしょう。

このように、ソシャゲ(ソーシャルゲーム・課金ゲーム)のガチャといえども、その程度によっては後の自己破産の手続きで重大な問題を生じさせることがありますので、もし仮に自己破産を考えている人でソシャゲ(ソーシャルゲーム・課金ゲーム)のガチャの利用経験がある場合には、速やかに弁護士や司法書士に相談し、適切な対応を取ることが求められるといえます。