「一人暮らし」をしている人が自己破産する場合に意外と気になるのが、実家との関係です。
「一人暮らし」をしていれば当然、実家との直接的な関係はないわけですが、自己破産の手続きでは家族に関する書類が必要になる場合もあるため、「自分が自己破産することで何らかの迷惑をかけてしまうことになるのではないか」と気がかりになってしまうのでしょう。
なかでも、「実家の家族に影響するか」「実家の家族にバレるか」「一人暮らしを辞めて実家に帰らなければならないか」という3点については、ほとんどの一人暮らしの人が自己破産する場合に不安になっているようです。
そこで今回は、この「実家の家族に影響するか」「実家の家族にバレるか」「一人暮らしを辞めて実家に帰らなければならないか」という3点について、実務的にはどのように扱われているのか、考えてみることにいたしましょう。
【1】実家の家族に影響が生じるか?
一人暮らしの人が自己破産した場合に、別の世帯として暮らしている実家の家族に影響が生じてしまうかという点については、「どのレベルでの影響なのか」という点で結論が異なってくるので一概には言えません。
例えば、実家の家族が自分の借金の保証人や連帯保証人になってくれている場合であれば、実家の家族の方にも請求がなされることになり影響を及ぼすことは避けられませんが、保証人や連帯保証人になっていないのであれば、そういった影響は一切ないことになります。
また、家族と共有する資産があるような場合は、自分が自己破産する際にその共有財産が資産として問題になるケースはありますが(例えば実家の土地が共有になっていてその共有持ち分について自分が所有権名義人となっているような場合)、そうでなければ実家の資産が自己破産の手続きで問題になることもないでしょう。
このように、一人暮らしの人が自己破産する場合に実家の家族に影響が生じるかという点はケースバイケースで異なってきますから、一概に「影響はない」とは言い切れない部分があります。
ですから、もし仮に一人暮らしをしていて自己破産を検討している場合には、早めに弁護士や司法書士に相談し、自分が自己破産した場合に実家の家族に影響が出る場合があるかという点を詳しく検討してもらう必要があるといえるでしょう。
【2】実家の家族に自己破産したことがバレるか?
一人暮らしの人が自己破産する場合に、実家の家族に自己破産することがバレるかという点については、まずほとんどのケースでバレることはないだろうと思います。
もちろん、先ほども述べたように、実家の家族に保証人や連帯保証人になってもらっている場合にはその家族の方に請求が行ってしまうので当然自己破産することはバレてしまうでしょうが、そうでない限り、通常はバレてしまうことはないと思います。
ただし、『自己破産で親バレしてしまう10のケース』のページでも紹介しているように、実家の家族との間で金銭の貸し借りがあったり、実家の家族が自分の名義で生命保険の契約をしているなど、自分名義の資産を実家の家族が管理しているような状況がある場合は、実家の家族に自己破産することがバレてしまう可能性も否定できません。
ですから、どうしても「実家の家族に自己破産することがバレないか心配」と思うのであれば、早めに弁護士や司法書士に相談し、実家にバレてしまうことがないか、また、実家にバレることを防ぐためにはどのような対処を取ればよいかを十分に検討する必要があるといえるでしょう。
【3】一人暮らしを辞めて実家に帰らないといけないか?
一人暮らしの人が自己破産する場合に「自己破産したら一人暮らしはやめなければならないのか」とか「実家に帰らないといけないのか」といった不安を感じる人がいるようですが、自己破産したからといってすべての場合に「一人暮らしを止めなければならない」とか「実家に帰らないといけない」といった状況に追い込まれるわけではありません。
もちろん、家賃の滞納がある場合にその滞納家賃を破産債権として届け出て裁判所から免責を受けた場合は、その滞納した家賃分の経済的損害を家主に与えていることになりますから、契約の更新を拒まれたり退去を促されたりということがあるかもしれませんのでその場合には引っ越しが必要な場合もあるでしょう。
(※店子が自己破産したことをもって直ちに賃貸契約を解除してよいのかという点が問題となりますが、論点がずれてしまうのでここでは議論しないことにします)
しかし、そういった事情でもない限り、自己破産したからといって退去を迫られることはないといえますから、自己破産したことで「一人暮らしを止め」たり「実家にかえらなければならなくな」ったりするような事態にはならないものと考えられます。
ただし、自己破産の原因が「一人暮らしそのもの」であるような場合(例えば、収入に見合わない高額な家賃のマンションに住んでいるとか、そうでなくても一人暮らしできるような収入がないのに無理をして一人暮らしをしているとか…)では、裁判官が免責を与える前提として「一人暮らしを見直してみること」や「実家に帰って一人暮らしできるような収入ができるまで一人暮らしを控えること」を進めてくることもあるかもしれませんので、そういった場合は「実家に帰らないといけない」場合もあるかもしれないので注意が必要です。
裁判官はその自己破産の申立人が破産することになった原因が改善されないと免責を与えることができませんので、「実家に帰らないと生活の再建ができない」と判断されないように生活態度を改めなければならないことは十分に肝に銘じておいた方がよいと思います。
最後に
以上のように、一人暮らしの人が自己破産する場合には、実家の家族との関係でいろいろと心配になることも多くあるかもしれませんが、必要以上に心配する必要性はそれほどないのではないかと思います。
もっとも、正確に回答するとすれば「ケースバイケースでことなる」としか言えないのが実情ですので、どうしても気になるというのであれば、早めに弁護士や司法書士に相談し、具体的にどのような影響が生じうるのかといった点について十分に検討してもたうことが必要になるといえるでしょう。