任意整理を弁護士や司法書士に依頼した場合、依頼を受けた弁護士や司法書士は債務者の代理人となって債権者との間で「利息のカット」や「債務額の減額」、「分割弁済」の和解が整うよう交渉に入ることになります。
依頼を受けた弁護士や司法書士と貸金業者やクレジット会社などの債権者との間で話し合いがまとまり分割弁済についての合意ができた場合には、その内容が記載された和解書(示談書)が作成されるのが通常です。
その場合には、債務者本人と代理人となった弁護士(または司法書士)、債権者の3者がその和解書(示談書)にそれぞれ記名押印した時点で晴れて和解成立となり、任意整理の手続きが終了することになります。
もっとも、任意整理の手続きがそこで終了するとはいっても自己破産とは異なりますから、その和解書(示談書)が作成された時点で借金がなくなるわけではありません。
債務者本人の返済はその和解書(示談書)を任意整理を依頼した弁護士や司法書士から受け取った時点から始まりますから、それ以降その和解書(示談書)で合意した弁済計画に従って毎月弁済を続けていかなければならないことになるのは当然です。
ところで、ここで疑問が生じるのが、任意整理の和解(示談)が整った場合に、その後に実際に債権者に対する弁済が始まるのはいつからなのか?という点です。
債権者に任意整理の和解にしたがって返済しなければならないにしても、和解書を受け取ってすぐに返済しなければならないとすればその準備も必要になりますので、債務者側にすれば実際の返済がいつからになるのかという点は非常に気になるところでしょう。
和解書を受け取った翌月末から返済が始まるのが一般的
任意整理で債権者と取り交わした分割弁済の和解に従って実際に返済が始まるのは、その事案によって異なりますので一概に「○日後」とか「○か月後」などと解説することはできません。
もっとも、弁護士や司法書士が貸金業者との間で分割払いの交渉をする際には、その交渉をした日の翌月の末日を第1回目の返済日とする和解を取り結ぶのが一般的です。
たとえば、任意整理を依頼した弁護士や司法書士が4月の上旬に債権者と任意整理の交渉をした場合には、4月中に和解書の取り交わしが完了すると考えられるので、翌月の5月の末日を第一回目の返済日とする分割弁済計画を和解書に盛り込むことになるでしょう。
ただし、たとえば弁護士や司法書士が4月の下旬に債権者と任意整理の交渉するような場合には、和解書(示談書)の取り交わしが翌月にずれ込むことが予想されますので、そのような場合には弁護士や司法書士が債権者と交渉をする翌々月の末日(たとえばこの例で例えると6月の末日)を第一回目の返済日とする和解を取りまとめることになると思います。
このように、弁護士や司法書士が債権者との間で取り結ぶ分割弁済の和解では第一回目の返済日を和解書を取り交わす日の属する月の翌月の末日とするのが慣例となっていますので、債務者本人が実際に任意整理で合意した弁済を開始するのも、任意整理を依頼した弁護士や司法書士から任意整理で債権者と合意した内容が記された和解書(示談書)を受け取った日の翌月の末が第一回目の返済日となることが多いと思います。
弁護士や司法書士が任意整理の交渉に取り掛かるまでは2~3か月間が必要になる
前述したように、任意整理で合意した弁済計画にしたがった実際の弁済が始まるのは、弁護士や司法書士から和解書(示談書)を受け取った翌月の末からということになります。
もっとも、これは任意整理を弁護士や司法書士に依頼したその月の翌月の末から弁済が始まるという意味ではありません。
なぜなら、弁護士や司法書士が任意整理の依頼を受けた場合には、まず債権者からその依頼人の借り入れと返済が記された取引履歴を取り寄せて利息の再計算をしなければなりませんし、仮に複数の債権者の任意整理の依頼を受けた場合にはその全ての債権者の分がそろわないと債務の総額が明らかにならないからです。
債権者も早いところでは2週間程度で取引履歴を発行してもらえますが、遅い債権者では取引履歴が到着するまでに数か月必要な場合も有りますから、通常は弁護士や司法書士に任意整理を依頼しても実際に債権者との交渉が始まるのは数か月経ってからというのが多いです。
ですから、和解書を受け取った日の翌月から返済が始まるとは言っても、その返済が始まるのは任意整理を弁護士や司法書士に依頼してから3~4カ月、あるいは半年程度後になる場合が一般的ですので、任意整理を弁護士や司法書士に依頼したらその翌月から弁済が始まるというように誤解をしないようにしてください。
弁済の開始を先に延ばすのは厳しいと思った方が良い
以上のように、任意整理で合意した弁済が始まるのは、和解書を受け取った翌月の末日を第一回目の返済日とするのが通常ですので、その弁済ができるように準備をしておく必要があります。
もっとも、前述したように、弁護士や司法書士が債権者と交渉を始めるためには取引履歴を取り寄せて利息の再計算をするという作業を経なければなりませんので、実際に弁済が始まるのは弁護士や司法書士に依頼してから3カ月~半年後というのが多いようです。
この点、弁済の開始をさらに遅らせることはできないか、という希望を持つ人もいるかもしれませんが現実的には厳しいでしょう。
任意整理の分割交渉をする場合には、債権者側はその翌月から返済が始まると考えて交渉に臨むのが通常ですので、それより先に第一回目の返済期日を延ばそうと交渉しても、債権者の側がそれに了承することはほぼありません。
1か月程度なら何とか理由を付ければ債権者も合意してくれる場合もありますが、和解書を取り交わす日の3か月後とか半年後とかを第一回目の返済日とするような和解は承諾してくれないのが通常です。
ですから、もしも弁済期日を先に延ばさなければならない事情がある場合には、弁護士や司法書士が取引履歴を取り寄せて債権調査を行う3か月~半年程度の期間中にその事情を解消できるよう努力することが必要となるでしょう。