任意整理すると賃貸契約の連帯保証人になれなくなる?

借金の返済が困難になった場合に、毎月に返済額を減少させて返済を楽にするため、弁護士や司法書士に依頼して債権者との間で債務の減額や利息のカット、分割弁済の支払いに関する協議を行う手続きを任意整理といいます。

任意整理を行う場合には、弁護士や司法書士に依頼して代理人となって交渉してもらうのが通常ですが、債務者から依頼を受けた弁護士や司法書士が債権者に対して受任通知を送付すると、債権者はそれ以降債務者に直接請求をすることが禁じられることになります。

そのため、任意整理を弁護士や司法書士に依頼した場合には、債権者に対する返済が事実上延滞状態になりますので、”延滞”として信用情報機関に事故情報として登録されてしまうことは避けられません。

▶ 任意整理した場合のデメリットとは?

いわゆる「ブラックリストに載る」という状況に陥ってしまうわけですが、このようにして信用情報機関に事故情報として登録されてしまうと、その登録されている期間は他の金融機関に融資の申し込みをしても、その金融機関から信用情報機関に信用情報の照会がなされることになりますので、容易に過去の任意整理の事実が明らかとなり、融資の審査は却下されることになります。

ところで、賃貸マンションや賃貸アパートを借りる際は家主や不動産会社から連帯保証人を付けるよう要求されるのが一般的ですが、そのような場合、過去に任意整理をしていたとしても保証人になることはできるのでしょうか?

任意整理をすると信用情報機関に一定期間(※任意整理の場合は5年間)事故情報が登録されるためその事故情報の登録期間中は新たな借入が困難となりますが、賃貸マンションやアパートの連帯保証人になる場合にも当然、信用調査がなされるはずですから、その審査の過程で信用情報機関に照会がなされ、過去の任意整理の事実が知られてしまう結果、連帯保証人の審査で落とされてしまうのではないか、と考えられるため問題となります。

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過去に任意整理していても、通常は賃貸マンションやアパートの連帯保証人になるのに差し支えは生じない

結論からいうと、仮に過去に任意整理をしていた事実があったとしても、賃貸マンションやアパートの契約時にその契約の連帯保証人になることは基本的に可能です。

なぜなら、金融機関からお金を借りる場合になされる信用情報の審査と、賃貸マンションやアパートを借りる際(もしくはその保証人なる際)になされる信用情報の審査はその方法が異なるからです。

前述したように、任意整理の手続きを行って借金を処理した場合には信用情報機関に事故情報として登録されてしまいますが、その登録先となる信用情報機関は「JICC」「CIC」「全国銀行協会」の3つのうちのいずれかに限られます。

そして、「JICC」「CIC」「全国銀行協会」の各信用情報機関に登録された信用情報を照会できるのは「JICC」「CIC」「全国銀行協会」のそれぞれに加入が認められた金融機関に限られますから、「JICC」「CIC」「全国銀行協会」のいずれかに加盟することができない企業や団体は、仮にその登録された信用情報を照会しようと思っても照会自体を掛けることができません。

この点、この場合には賃貸マンションやアパートの家主や不動産業者は、金融機関ではありませんから、「JICC」「CIC」「全国銀行協会」のいずれの信用機関にも加盟することはできませんし、当然ながら任意整理によって登録された事故情報を照会することも不可能です。

ですから、仮に家主や不動産業者が賃貸契約の連帯保証人として申し込まれた人物の過去の借金や返済状況について調査しようと考えても、「JICC」「CIC」「全国銀行協会」といった信用情報機関に照会を掛けることはできませんから、過去の任意整理による延滞情報等の事故情報も知られてしまうことは基本的にありません。

したがって、過去に任意整理で借金を処理していたとしても、基本的には賃貸マンションやアパートの連帯保証人になることに支障はないといえます。

例外的に、過去の任意整理の事実が賃貸マンションやアパートの連帯保証人になる際に問題になる場合

前述したように、仮に過去に任意整理で借金を処理した事実があったとしても、賃貸マンションやアパートの連帯保証人になる際に問題となることは基本的にありません。

「子供が進学してアパートを借りる際に保証にになれなくなったらどうしよう」と不安になって任意整理に踏み切れない多重債務者も意外と多いのではないかと思いますが、そのような不安は基本的に取り越し苦労に過ぎないといえます。

ただし、このように任意整理の事実が賃貸マンションやアパートの連帯保証人になる際に問題となれないというのはあくまでも多くの場合そうであるというだけであって、ケースによっては連帯保証人の審査で落とされるケースもないわけではありません。

たとえば、賃貸マンションやアパートの契約をする際に、家主や不動産業者から、連帯保証人とは別に「家賃保証会社」の家賃保証も契約するように求められた場合です。

「家賃保証会社」に保証人となってもらう場合には、その賃貸物件を借りる借主や連帯保証人になる人の信用情報が調査される場合がありますが、仮に「家賃保証会社」がクレジット会社であった場合には、賃貸契約に際してその家賃保証会社であるクレジット会社から前述した「JICC」や「CIC」などの信用情報機関に対して信用情報の照会がなされる可能性がありますので、仮に照会がなされてしまった場合には、過去に任意整理をしている事実が知られてしまうことにより、賃貸契約の審査が下りない可能性もあるでしょう。

もちろん、家主や不動産業者が指定する「家賃保証会社」はクレジット会社などの金融機関には含まれない企業や団体の場合もありますので、全ての家賃保証会社が「JICC」や「CIC」などの信用情報機関の保有する情報にアクセスできるわけではありません。

しかし、仮に家主や不動産業者が指定する「家賃保証会社」がクレジット会社などの企業であった場合には、過去の任意整理の事実が知られてしまうリスクはあるといえます。

このように、賃貸契約に家賃保証会社が絡むような物件については、過去の任意整理の事実が賃貸契約の連帯保証人になる際に問題となるケースがありますので、過去に任意整理をした場合には賃貸契約をする際に十分注意をすることが必要でしょう。

※ただし、信用情報期間の事故情報は登録から5年で抹消されるのが通常ですので、任意整理が終了してから5年が経過すれば、上記のように家賃保証会社が契約に絡む場合であっても過去の任意整理の事実が賃貸契約の際に問題にされることは一切ありません。