アイドルの握手券欲しさにCDを大量購入しても自己破産できる?

最近では、CDの売り上げ減少の対策もあってか、アイドルのCDには握手券を”おまけ”として同梱し販売するケースが多くみられるようです。

このCDに握手券を同封するという販売方法は、テレビで見かけるような有名なアイドルだけにとどまらず、巷に乱立する地下アイドルでも行われているようですから、さながらアイドル握手券時代に突入したといっても過言ではないかもしれません。

ところで、このようにアイドルの握手券を同封してCDが販売される場合には、当然その握手券欲しさに同じCDを一人で何枚も(何十、何百枚も…)購入する人が出てくるのは致し方ない面もあるでしょう。

しかし、その購入者が借金をしてまでそのCDを購入している場合は話が違ってきます。

なぜなら、借金を返済できるなら良いですが、握手券欲しさに同じCDを何枚・何十・何百枚も購入する行為は、一般論として理解することはできませんから、仮に返済ができなくなり自己破産する場合には、とうてい債権者の理解を受けることはできないからです。

では、実際にアイドルの握手券欲しさに借金をしてCDを大量に購入したにもかかわらず、その返済ができなくなって自己破産をするに至った場合、その自己破産の手続きは裁判所に認めてもらえるのでしょうか?

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握手券欲しさの大量CD購入は「浪費」と判断される

CDに添付された握手券欲しさに本来不要であるはずのCDを大量に購入する行為は、自己破産の手続きにおいては「浪費」と判断されます。

なぜなら、CDの用途はそこに録音された音楽を聴くことにあるのが通常で、録音された音楽が全く同じCDを大量に購入しなければならない必要は無いはずだからです。

また、このようなケースではCDに同梱されている握手券を大量に取得することによってアイドルとの握手時間を延長することが本来の目的といえますが、そのアイドルとの握手自体は握手券(CD)一枚でも可能なわけですから、その時間を延長するためだけに大量のCD(握手券)を購入する行為は、一般論でいうと金銭を無駄に消費する行為と判断できます。

このように、そのアイドルのファンからすると大切な握手券なのでしょうが、一般論で考えれば、その握手券を目的に大量のCDを購入することは「浪費」と判断されますので、自己破産の手続きにおいても「浪費」として問題になるのです。

「浪費」は免責不許可事由となるのが原則

自己破産の手続きで「浪費」と判断された支出がある場合には、自己破産の手続きにおいて裁判所から免責(※借金の返済が免除されること)が認められないのが原則的な取り扱いとなります(破産法第252条第1項4号)。

【破産法第252条第1項】

裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
第1号~3号(省略)
第4号 浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。
(以下、省略)

なぜなら、借金の原因が「浪費」と判断される場合は、債権者から借りたお金を無駄に消費していることになり、そのような無駄金の散財に裁判所が免責を出すのは債権者の経済的損失を考えると到底債権者側は納得できないでしょうし、むやみにそのような「浪費」に免責を与えてしまえば安易な借り入れが横行し、モラルハザードを起こして社会経済が混乱してしまう可能性があるからです。

したがって、金融機関から借り入れたお金を原資として、アイドルとの握手会の時間を延長するために同じCDを大量に購入する行為は、仮に自己破産の申立を行ったとしても「浪費」と判断されて免責不許可事由となり、自己破産の手続きによる返済の免除が受けられなくなるというのが原則的な取り扱いとなるのです。

免責を受けたい場合は裁判官から「裁量免責」を出してもらうほかない

以上のように、アイドルの握手券欲しさに同じCDを大量に購入する行為は「浪費」と判断されますから、そのような事実があった後に自己破産の申立を行う場合は、免責不許可事由に該当すると判断され免責が受けられないのが原則的な取り扱いとなります。

もっとも、だからといって、このような場合に絶対に免責が受けられないのかというと、そういうわけではありません。

自己破産の手続きでは、仮に免責不許可事由に該当し免責が相当でないと認められる場合であっても、裁判官の判断(裁量)によって特別に免責を与えることができる「裁量免責」の制度が設けられているからです(破産法第252条第2項)。

【破産法第252条第2項】

前項の規定にかかわらず、同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。

この点、具体的にどのような場合に裁判官がこの「裁量免責」を出してくれるかは、その裁判官の思想・信条や、自己破産の申立を行った裁判所の方針によって異なりますので(※裁判所は各地域によって方針が若干異なっています)一概には言えません。

しかし、自己破産の申立をしている多重債務者は現実問題として借金の返済が不可能になったからこそ申し立てをしているのですから、「免責不許可事由に該当するので免責は認めません」と突き放してしまったのでは、返済のできない債務者を何の救済もせずに放りだすことになってしまい問題が生じます。

そのため、多くの裁判所では、破産管財人による厳しいチェックがなされるものの、比較的緩やかに「裁量免責」を認めている傾向がありますので、アイドルの握手券欲しさに同じCDを大量に購入していることが原因で自己破産する場合には、裁判官に「裁量免責」を認めてもらえるように手続きを進めていく必要があります。

裁量免責を受けるためには具体的に何をすればよいか?

前述したように、アイドルの握手券欲しさに同じCDを大量に購入する行為は浪費と判断され免責不許可事由となるのが原則ですから、裁判所から免責を受けたい場合には裁判官から「裁量免責」を出してもらうようにしなければなりません。

この場合の具体的な方法は自己破産を依頼した弁護士や司法書士によってさまざまなやり方があると思いますが、一般的には、「裁量免責」を出してもらえるように、アイドルの握手券欲しさに同じCDを大量に購入してしまった経緯などを詳細に記述した「上申書」を作成するとともに、そのことによって債権者に多大な経済的損失を与える結果となってしまったことを反省する「反省文」を作成し、裁判所に提出して裁判官や破産管財人の理解を求めることが多いと思います。

このように上申書や反省文で誠意を見せれば、裁判所や破産管財人としても「これだけ反省してるんだから免責を認めてあげてよ」と債権者に説明することもできますので、上申書や反省文を提出することぐらいは最低限やっておいた方が良いのではないかと思います。

最後に

裁判所や破産管材人も鬼ではなく、申立人が誠実に反省した様子を見せる限り、救済の手を差し伸べるのが一般的ですから、仮にアイドルの握手券欲しさに同じCDを大量に購入してしまった場合には、上記のような手順で裁量免責を受けられるよう誠意を尽くすしかないでしょう。

もちろん、アイドルの握手券欲しさに、借金をしてまで同じCDを大量に購入する行為自体をしないようにすることがまず大切なのはいうまでもありませんが……