任意整理をすると転職や就職に影響があるか?

任意整理とは、弁護士や司法書士に代理人となってもらい、消費者金融などの貸金業者やクレジット会社などの債権者との間で債務の減額や利息のカット、残債務の分割弁済の協議を行う債務整理手続きの一種のことをいいます。

自己破産や個人再生、特定調停などの他の債務整理手続きと異なり、裁判所に申し立てをしないで済むことから、簡易迅速な借金の処理方法として幅広い層の多重債務者に利用されている手続といえます。

ところで、任意整理を行うと信用情報機関に事故情報として登録されるなど一定の不利益を受けることは避けられませんが(※詳しくは→任意整理した場合のデメリットとは?)、任意整理で借金を整理したことによって就職や転職に何らかの影響が出るようなことはあるのでしょうか?

任意整理をするということは「借りたお金を当初の契約通り返さない」ということになり、個人の信用としては否定的なイメージが付いてしまいますので、そのことで就職や転職に関して何らかの影響が生じないのかという点が問題となります。

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任意整理が就職や転職に影響することは一切ない

結論からいうと、任意整理を行った事実が就職や転職に影響することは一切ありません。

なぜなら、任意整理を行った場合、信用情報機関に事故情報として登録されることになりますが、その信用情報機関に登録された情報に照会を掛けることができるのは、その信用情報機関に加盟している金融機関が融資の審査の必要性があると判断した場合に限られているからです。

就職や転職する企業が金融機関ではない一般企業の場合には、そもそもその企業は信用情報機関の登録情報にアクセスすることはできませんし、仮に就職先や転職先が金融機関であったとしても、就職や転職に際して行われる面接などの「採用審査」は、お金を借りる際の「信用審査」とは異なりますので就職先や転職先の金融機関から信用情報機関に事故情報の照会を行うことはできません。

したがって、仮に任意整理をして信用情報機関に事故情報の登録がなされてしまったとしても、その事故情報が就職先や転職先に知られてしまうことはありませんから、任意整理をしたことが就職や転職に影響することはないといえます。

任意整理では自己破産のような職業制限も存在しない

任意整理では自己破産の際に生じる職業制限も存在していません。

自己破産を申し立てた場合には、裁判所から自己破産の開始決定が出されてから手続きが終了し、裁判所から出される免責許可決定が確定するまでの期間(早ければ約半年程度の期間)は、警備員や保険の募集人(生命保険の販売員など)、税理士などといった他人の財産を管理するような職種に勤務することが法律上禁止されています。

▶ 自己破産した場合のデメリットとは?

しかし、任意整理の手続きはそもそもが債務者と債権者の間で行われる借金返済に関する協議を行う示談交渉の場に過ぎず、法律で定められた手続きではありませんので、任意整理の場合にはこのような職業制限を規定した法律も存在していません。

したがって、任意整理をしたことをもって就職や転職に影響が生じる職業というのもありませんから、その面でも任意整理をしたことが就職や転職に影響することもないといえます。

最後に

以上のように、任意整理をしたこと自体が就職や転職に影響することはありませんから、任意整理をする際に就職や転職への影響を懸念する必要は一切ありません。

むしろ、任意整理で借金を整理して生活を安定させることは、心身の健康につながり就職や転職に有益な影響を与えることになるとも言えますので、借金の返済に窮している場合には早めに弁護士や司法書士に相談し、任意整理など適切な債務整理の方法で借金を処理することが必要となるでしょう。