任意整理すると生命保険は強制解約させられる?

任意整理の手続きを弁護士や司法書士に依頼すると、弁護士や司法書士が代理人となって債権者との間で債務の返済に関する協議を行うことになります。

この場合、原則36回(3年)の分割払いで和解が成立するのが一般的ですので、任意整理の手続きが終了した後はこの和解に従って毎月債権者に返済を続けていくことになるのが通常です。

ところで、この任意整理の交渉において気になるのが、生命保険の取り扱いです。

生命保険に加入している場合には、解約した場合に受け取ることができる解約返戻金が発生しているケースがありますので、任意整理の交渉をする場合にその解約返戻金を債務の返済に充てるよう債権者から求められたりするのではないかとか、強制的に生命保険を解約させられてしまうのではないかといった不安を持つ人は意外に多いのかもしれません。

では、任意整理をする場合には加入している生命保険は解約などの影響を受けてしまうものなのでしょうか?

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任意整理の手続きで生命保険が強制的に解約させられることはない

前述したように、任意整理をする場合に生命保険が強制的に解約されてしまうのではないかという不安を感じている人も多いようですが、任意整理の手続きで生命保険が強制的に解約させられてしまうことは100%ありません。

おそらく、このように強制解約の不安を持っている人は、自己破産の場合と混同しているのではないかと思います。

確かに、自己破産の手続きは清算手続きの性質を有していますから、自己破産の申し立てをした人が生命保険に加入して解約返戻金がある場合には、その金額によっては(※具体的には解約返戻金が20万円を超えるような場合)加入している生命保険が裁判所(破産管財人)から強制的に解約させられて払い戻された解約返戻金が債権者に分配(配当)される場合があります。

しかし、任意整理は裁判所に申立てが必要な手続きではなく、その実質はあくまでも債務者と債権者の間における私的な示談交渉の場に過ぎません。

そのため、任意整理の手続きに裁判所の強制力が及ぶことはありませんから、裁判所などに取り上げられて強制解約させられるという心配もないのです。

生命保険の解約返戻金を返済に充てることは差し支えない

前述したように、任意整理は自己破産の手続きとは異なり裁判所の影響力は生じませんから、たとえ高額な解約返戻金の発生している生命保険に加入している場合であっても、その生命保険が強制的に解約させられたり、債権者から生命保険を解約するよう求められることは一切ありません。

もっとも、自らの意思で生命保険を解約し、払い戻される解約返戻金を債権者に対する弁済に充てることは差し支えありません。

例えば、借金の残額が120万円ある状況で債権者と任意整理の分割交渉をしているような場合に、解約返戻金が100万円あるような生命保険がある場合には、その生命保険を解約して払い戻される100万円の解約返戻金を債権者への弁済にあてて、残りの20万円を毎月の分割払いにする(例えば2万円を10回の分割払いにするなど)などの任意整理の和解を組むなどの場合が考えられます。

このように、債務者側が解約返戻金の解約に差し支えないのであれば、債務者側で生命保険を解約して解約返戻金を返済に充てることはまったく問題ありません。

ただし、この場合でも依頼した弁護士や司法書士に解約返戻金があることを申告し、生命保険を解約して解約返戻金を返済に充当したいことを伝えておく必要があることは当然です。

生命保険を解約して返戻金が振り込まれるためには保険会社の手続きやそれなりの期間も必要ですから、あらかじめ弁護士や司法書士に申告したうえで手続きを進めることは非常に重要といえます。

生命保険の整理も必要

なお、任意整理とは直接関係ないかもしれませんが、多重債務に陥っているにもかかわらず多額の解約返戻金が生じている生命保険がある様な場合には、収入に比較して分不相応な生命保険に加入しいる可能性が高いといえます。

このような状況では生命保険料の支払いを借り入れで賄っていることになりますから、本来であればそもそも生命保険に加入するような余裕のある家計状況ではない可能性が高いです。

ですから、このように貸金業者やクレジット会社からの借り入れの返済に窮しているにもかかわらず、多額の解約返戻金が発生するような生命保険に加入している状況にあるような場合には、借金の整理だけでなく生命保険の整理も同時進行で行い、不要な生命保険を解約したり必要最低限の生命保険だけに絞るなど、保険のリストラも考える必要があるのではないかと思います。