ネットカフェ難民が自己破産する場合の具体的手順

ネットカフェ難民とし毎日をかろうじてやり過ごしている人の中には、借金の返済ができないことから身を隠すためネットカフェに逃げ込んだものの、住所がないことから定職に就くこともできなくなり普通の生活に戻れなくなったという人も多くいるのではないかと思われます。

このようなケースでは、本人に普通の生活に戻って定職に就きたいという希望があったとしても、お金もなく、住所もなく、あるいは携帯電話すら契約できないことから、弁護士や司法書士に相談することもできずに、ただ悶々と日雇い仕事で(女性の場合は風俗営業法関連の仕事で)日々の糧を得ているのが実情かもしれません。

しかし、そのように嘆いていても借金がなくなるわけではありませんし住む場所が得られるわけでもありませんから、元の普通の生活に戻りたいと思うのであれば自分自身で具体的な行動を起こす必要があります。

そこでここでは、ネットカフェ難民の人が、具体的にどのような行動をとれば、自己破産をして借金を整理し、元の普通の生活に戻ることができるのかといった手順をシュミレーションしてみることにいたしましょう。

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(1)まず最寄の市区町村役場で生活保護の申請を行う

ネットカフェ難民の人が借金を整理する場合には事実上自己破産でしか処理できませんが、自己破産の申立を行う場合には少なくとも「居所(住んでいる場所)」の確保が必要となります。

ネットカフェ難民の「居所」は、その寝泊まりしている「ネットカフェ」となりますが、自己破産の手続き上、ネットカフェを居所として申し立てをすることも不可能ではありませんが事実上の困難が伴いますので、まず最初に賃貸アパートなどに入居する必要があります。

もちろん、ネットカフェ難民の人はお金がないわけですから、すぐにアパートを借りることは不可能です。

ですから、役所に生活保護の申請をして、生活保護の受給を受ける必要があるのです。

なお、仮に役所で生活保護の申請を断られた場合は、次の(3)で自己破産を依頼する弁護士か司法書士にその旨を申告し、その弁護士や司法書士に生活保護の申請に同行してもらうように頼んでください。

(2)法テラスの無料法律相談を予約する

ネットカフェ難民の人が借金を整理する場合には、まず法テラスに電話をし、法テラスの主催する無料法律相談会を予約してください。

法テラスとは国が設置した外部機関で、収入が無いもしくは著しく低い人でも法律サービスが受けられるよう、法律専門家である弁護士や司法書士を仲介したり、弁護士や司法書士の報酬を立て替えたりすることを主な業務とする団体のことをいいます。

法テラスでは、随時無料の法律相談会を実施していますので、法テラスに電話を入れて無料法律相談の予約をとれば、2週間程度で弁護士または司法書士の無料相談を受けることが可能です(※ただし予約制の為、希望者が多い場合は電話のあった順に受け付けられることになります)。

(3)法テラスの無料相談で弁護士(または司法書士)に自己破産の依頼を受けてもらう

法テラスの無料法律相談が予約出来たら、弁護士(または司法書士)に相談を受けてもらう際に、自己破産の申立てについて相談し依頼を受けてもらうようにしてください。

※弁護士や司法書士に依頼する際に必要となる報酬や手続費用は一切必要ありません→この点は後述の(6)で説明しています。

また、前述の(1)で生活保護の申請を拒否されている場合には、その旨をその弁護士(または司法書士)に申告し、必要であれば役所に同行してもらい、生活保護の申請を受理するよう弁護士(または司法書士)から話をしてもらうようにします。

※この場合には相談する弁護士(または司法書士)に「自己破産の手続きの依頼」と「生活保護申請の同行(又は代行)の依頼」の2つを依頼し、2つを同時進行で処理してもらうことになります。

このようにすれば、役所の方でも生活保護の申請を拒否することは通常は考えられませんので、多くの場合生活保護の申請は承認されることになります。

なお、法テラスで法律相談に応じる弁護士(または司法書士)が生活保護の申請のサポートを嫌がったり、生活保護の受給ができない限り自己破産の依頼も受けられないなどと言うような場合には、法テラスや各都道府県の弁護士会や司法書士会に苦情を申し入れて他の弁護士(または司法書士)と交替してもらってください(※電話でもOKです)。

生活保護は憲法第25条1項で国民に認められた「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を実現するために必須のものであり、生活保護の申請が役所から却下ないし妨害されることは重大な人権侵害といえますが(日本国憲法第25条1項)、そのような人権侵害に「法曹」という資格を国民から預けられた弁護士(※司法書士は法曹には含まれませんが司法書士も同様です)が何の対処もしないことは、その弁護士(司法書士)は法律家としての義務を放棄ないし懈怠したものとして問題があるからです。

なお、各都道府県の弁護士会(司法書士会でも同じ)では積極的に生活保護申請の代行や同行を行っていますので、よほどの悪徳弁護士や司法書士にあたらない限り、生活保護申請の同行(又は代行)はやってもらえるものと思います。

▶ 日本弁護士連合会│Japan Federation of Bar Associations:生活保護

▶ 日本弁護士連合会│Japan Federation of Bar Associations:生活保護の申請手続

(4)生活保護の支給が開始されたら賃貸アパートを探して入居する

生活保護の申請が受理されたら、数日から数週間で生活保護の給付が始まりますので、自己破産を依頼した弁護士(または司法書士)と連絡を取りながら、その給付された生活保護費を原資に入居できる賃貸アパートを探してください。

自分でアパートを探すことが困難な場合は、依頼する弁護士や司法書士に相談してサポートを受けても良いでしょう。

アパートの契約には保証人が必要だったり、生活保護受給者の入居を拒否しているものもありますが、物件によっては保証人がいなくても保証会社を付けることで(保証料が必要になります※年間数千円程度)入居が認められるものもありますし、家主によっては生活保護受給者を歓迎してくれる物件も数多くありますので、弁護士や司法書士、そして不動産業者と連携を取りながら、アパートに入居できるようにしてください。

(5)アパートに入居出来たら自己破産の手続を進める

アパートへの入居ができたら、「住所」ができるため自己破産の申立も問題なく進めることが可能です。

あとは、弁護士や司法書士から指示される書類(住民票や所得証明書、無資産証明書など)を収集して申立手続きを粛々と行うだけです。

詳しい申立書の作成は弁護士や司法書士がやってくれますので、弁護士や司法書士から連絡があった都度事務所に出向くなりして打ち合わせを行います。

申立が受理されれば早ければ半年ほどで自己破産の手続きは終了し借金の整理は終わります。

(6)弁護士や司法書士の費用について

なお、法テラスの紹介で依頼を受けてもらった弁護士や司法書士には報酬(手続き費用)を支払わなければなりませんが、法テラスでは弁護士や司法書士の報酬(手続き費用)の立替制度(民事法律扶助制度)を実施していますので、お金が全くない場合でも弁護士や司法書士に上記の依頼をすることは可能です。

また、この法テラスが立て替えた弁護士や司法書士の報酬(手続き費用)は通常であれば依頼人が分割で法テラスに償還していかなければなりませんが、生活保護を受給している人の場合は法テラスへの償還が全額免除されますので、1円も支出することなく自己破産の手続きを弁護士や司法書士に依頼することが可能です。

このように、ネットカフェ難民の人であれば、生活保護の受給を受けることで実質無料で弁護士や司法書士に自己破産の手続きを行ってもらうことができますので費用の心配は一切ありません。

最後に

以上のように、たとえネットカフェ難民のように住所やお金、仕事がない人であっても、手順を一つずつこなしていけば自己破産で借金の処理をすることは可能ですし、賃貸アパートを借りるなどして住所を手に入れることも可能です。

住所さえ手に入れれば携帯電話を契約することもできますし、仕事の面接で困ることもないはずです。

ですから、ネットカフェ難民に陥ってしまったことは不幸なことではありますが、上記のような方法もあることは知っておいてほしいと思います。

もしも今、ネットカフェでこのページを見ている人がいるのであれば、無理に日雇いで働いたり風俗営業法関連の仕事で働いて体を壊してしまう前に、少しだけでも行動してみるようにしてもらいたいと思います。