親が自己破産すると子供にどのような影響が生じるか?

子供のいる家庭の親が自己破産する場合に気になるのが、親が自己破産することによって子供にどのような影響が生じるかという点です。

自己破産の手続きはその世帯全員に関する書類等の提出も必要となりますから、子供の学校に知られてしまうのではないかという不安や、子供の進学や就職に影響が出てしまうのではないかという不安も少なからず生じてしまうのが現実です。

また、子供のために学資保険や医療保険などを契約している場合には、その保険がどのような扱いを受けてしまうのかという点も気になるところでしょう。

では、実際問題として、親が自己破産した場合には子供のどのような影響が生じてしまうことになるのでしょうか?

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(1)「学費」「給食費」「PTA会費」などに滞納がある場合は親が自己破産することが学校に知られてしまう

親が自己破産する場合に、その事が子供の学校に知られてしまうのではないかと心配する人は多くいますが、「親の負債を清算する」という自己破産の手続きと、「子供に教育を施す」という教育の実施とは、その目的も性質も全く異なりますので、親が自己破産したことが子供の学校に知られてしまうことは基本的にないものと考えられます。

ただし、子供が通う学校に支払うべき「学費」や「給食費」あるいは「PTA会費」などの支払いが滞り、支払期日までに支払っていない未払い分がある場合には話が別です。

なぜなら「学費」や「給食費」あるいは「PTA会費」などといった学校に支払わなければならないお金は、子供の親権者(法定代理人)である親に支払い義務がありますので、その未払い分は「親の負債」ということになるからです。

「学費」や「給食費」あるいは「PTA会費」が「親の負債」となれば当然、自己破産の手続きではその滞納している「学費」「給食費」「PTA会費」を自己破産における「負債」として、その支払先である「学校」を自己破産における「債権者」として裁判所に申告しなければらなくなってしまいます。

そうすると、手続きが開始されれば裁判所から債権者である学校に対して「〇〇という人が自己破産の手続きを始めましたよ」という通知がなされることになりますから、学校に「〇〇という生徒(児童)の親が自己破産している」ということが知られてしまうことになるのです。

▶ 親の自己破産が子供の学校に知られてしまう3つのケース

もちろん、親が自己破産したからと言ってその子供の評価に影響するものではありませんから、親が自己破産したからと言って子供の進学に影響が出るわけではありませんし、そもそも「学費」「給食費」「PTA会費」など経理上の問題が学校の先生に逐次連絡することはないと思いますので校内で親が自己破産した噂が広まることもないと思います。

しかし、「学費」「給食費」「PTA会費」などに未払い分がある場合には裁判所から学校に自己破産の通知がなされるということは認識しておいた方が良いでしょう。

▶ 子供の学費・給食費を滞納している親が自己破産する場合の注意点

(2)学資保険は取り上げられるのが原則

子供のために学資保険を契約している場合には、自己破産した場合にその学資保険が強制解約され、その解約に伴って保険会社から払い戻される解約返戻金が債権者への配当に充てられることになることがあるので注意が必要です。

自己破産の手続きでは、現金以外に20万円以上の資産的価値がある場合には、その資産(財産)については全て裁判所(破産管財人)が取り上げて換価し、そのお金を債権者に配当するのが通常です。

(※なぜ20万円が基準となるかについては→自己破産ではどんな場合に管財事件になるの?

この点、子供のいる家庭では子供の進学のため学資保険に契約しているところが多いようですが、この子供のために契約した学資保険についてもその学資保険を契約した場合の解約返戻金が20万円以上あるようであれば、自己破産の手続きにおいては「債権者の配当に充てるべき資産」と判断されることになります。

したがって、親が自己破産する場合に、その自己破産する親が契約者となっている学資保険がある場合には、破産管財人によって強制解約され、その解約返戻金が債権者への配当に充てられることは避けられないものと解されます。

※ただし、親の一方が自己破産する場合、例えば夫と妻のうち「夫」だけが自己破産する場合には「夫」の資産だけが債権者への配当に充てるべき資産と判断されますから、その場合には「夫」が契約者となっている子供の学資保険は取り上げられますが「妻」が契約者となっている学資保険は取り上げられないことになるのが原則的な取り扱いとなります。

ただし、このような場合であっても「妻」が契約している学資保険が事実上自己破産する「夫」が契約者として保険料を支払っていたと認められる場合には、破産管材人の判断によって強制解約され解約返戻金が債権者の配当に充てられる場合も有ります。

(3)子供の奨学金の保証人になっている場合は他の保証人を付けるよう求められる

子供が借りている奨学金の保証人になっている親が自己破産する場合には、奨学金を融資している団体から他の保証人を付けるよう要請される場合があります。

奨学金の保証人となっている親が自己破産する場合には、その奨学金の融資を行っている団体を債権者として裁判所に申告しなければなりませんから、自己破産した後はその奨学金の保証債務も免責されることになります。

そうすると奨学金を融資している団体は貸し付けている奨学金について保証人を失うことになってしまいますので、代わりの保証人を付けるよう要求されることになってしまうのです。

ですから、子供の奨学金の保証人になっている親が自己破産する場合には、親族などに相談するなどして、自分の代わりにその奨学金の保証人になってくれる人を探しておかなければならないでしょう。

※なお、親が自己破産した場合には、その時点で奨学金を借りていなくても、その後に子供が奨学金を借りる場合には保証人になれなくなってしまいます。

自己破産をすると信用情報機関に5年~10年の期間事故情報として登録されることになりますから、その期間は新たな借り入れを行ったり他人の保証人になったりする場合に審査で落とされてしまうのが通常です。

ですから、自己破産した後に子供が奨学金を借りる場合は、親族などに保証人になってくれるようお願いするしかないでしょう。

他の影響

親が自己破産した場合に子供に対して生じる影響としては上記の3つが代表的なものとして挙げられます。

一般に言われるように戸籍や住民上に記載されたり、進学する際の内申書や就職の際の評価に影響するとかいうことはありませんし、子供の貯金が親の自己破産で裁判所に取り上げられてしまうといったようなことも基本的にはありませんのでその点については安心してよいものと思われます。

▶ 親の自己破産は子どもの就職に影響するか?

▶ 親が自己破産すると子供の貯金も取り上げられてしまうのか?

もっとも、自己破産が子供に与える影響はその家庭の環境によって異なってきますし、細かく考えれば上記で挙げた事項以外にも影響が生じる可能性はありますので、子供への影響が心配な場合は早めに弁護士や司法書士に相談し、適切な対処を取ることで子供への影響を最小限に抑える必要があるといえます。