自己破産した場合のデメリットとは?

自己破産は裁判所に申立を行うもので、裁判所から免責の許可が出されれば借金全額の支払いが免除される債務整理手続きの一種です。

債務整理の他の手続きである任意整理や特定調停、個人再生などの場合は債権者に一定の金額を分割返済しなければなりませんが、自己破産の場合は債務全額の返済から逃れることができますのでもっとも迅速に生活の再建に着手できる借金の整理方法といえます。

もっとも、自己破産は借金の整理手続きであるとともに”清算手続”という側面も有していますから、自己破産を行う場合には一定の不利益も甘受する必要があります。

では、自己破産を申し立てると具体的にどのような不利益(デメリット)が生じてしまうのでしょうか?

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(1)信用情報機関に事故情報として登録される

裁判所に自己破産の申立を行うと信用情報機関に「事故情報」として登録がなされることになります(※昔でいうと「ブラックリストに載る」ということ)。

登録期間は消費者金融やクレジット会社などからの借り入れについては5年間、銀行などからの借り入れについては10年間とされていますので、5年~10年の間は信用情報機関に「自己破産をした」という情報が存続し続けることになります。

▶ 登録内容と登録期間|日本信用情報機構(JICC)指定信用情報機関

▶ CICが保有する信用情報|信用情報について|指定信用情報機関のCIC

個人情報の取扱い – 全国銀行協会

なお、信用情報機関に事故情報として自己破産に事実が登録されると以下のような不都合が生じることになります。

(ア)新規の借り入れが困難になる

信用情報機関に自己破産した事実が事故情報として登録されると、その後に新しくお金を負借りたり、ローンを組んだり、クレジットカードを作る際に審査が通らなくなります。

貸金業者やクレジット会社に借り入れやローンの申し込みを行った場合には貸付審査のために信用情報機関に対して過去の借り入れや返済、延滞などの照会がなされますから、その照会の際に過去に自己破産していることが貸金業者やクレジット会社に明らかとなります。

当然、自己破産するような利用者に貸し付けをすることはリスクが大きすぎますから、一般的な貸金業者やクレジット会社は審査で落とすことになるでしょう。

このように、信用情報機関に事故情報として登録されてしまうと、その登録期間(自己破産の場合奈5年間)は新しい借り入れやローンの申し込みができないと考えられますので注意が必要です。

(イ)保証人になれなくなる

自己破産したことが信用情報機関に事故情報として登録されてしまうと、保証人になることもできなくなります。

子や親族が何らかの事情でお金を借りたりローンを組んだりする際に保証人になることを頼まれることがあるかもしれませんが(例えば、子の奨学金の連帯保証人になる場合など)、その場合には相手先が保証人候補者の信用情報について信用情報機関に照会を掛けますから、その際に自己破産をしていることが明らかとなってしまいます。

当然、過去に自己破産をしたような人が保証人になったとしても返済は期待できませんから、金融機関からリスクが高いと認定され、保証人として不適格と判断されるでしょう。

(ウ)携帯(スマホ等)の機種変更ができなくなる

また、あまり知られていませんが、信用情報機関に事故情報として登録されてしまうと携帯(スマホ等)の機種変更ができなくなる(難しくなる)という点も理解しておく必要があります。

携帯の機種代金は多くの携帯キャリア代理店で「実質ゼロ円」などのキャンペーンの対象とされているようですが、携帯の機種代金が「ゼロ円」なのではなく「月々の通信料が機種代金相当額分だけ割引される」だけですので、その実態は単に形態の機種代金を「毎月の通信料」として毎月支払っているにすぎません。

これは単に形態(スマホ等)の機種代金を「分割払い」しているのと変わりありませんから、携帯の機種変更時にはその機種代金を一括で支払わない限り「クレジット契約」として信用情報機関に信用情報の照会がなされることになります。

そうすると過去に自己破産している場合にはその「自己破産をした」ということが審査に引っかかってしまうことになりますから、過去に自己破産をして借金の返済ができなくなった人の携帯の機種代金をクレジット契約で貸し付けるのはリスクが高すぎると判断されて、携帯の機種変更が断られることになるでしょう。

したがって、仮に自己破産をした場合には、信用情報機関に登録される5年間は新しく携帯の機種変更をすることはできないと考えた方が良いかもしれません。

なお、これを回避するためには、携帯キャリア(dokomo,au,softbank)の代理店で携帯(スマホ等)の機種を購入するのではなく、事前に中古販売店などで中古のスマホ等を一括払いで購入しておき、その中古販売店で購入した中古のスマホ等をキャリアの代理店に持ち込んで機種変更するしかありません。

こうすると携帯の機種変更について機種の代金が分割支払いになることはなくクレジットが利用されることもありませんから、機種変更ができることになります。

(2)保証人に一括請求がなされる

自己破産をすると保証人や連帯保証人、連帯債務者に対して一括請求がなされることもデメリットとして挙げられます。

自己破産をする場合には弁護士や司法書士から各債権者に対して「これから債務整理(自己破産)の手続きを始めることになりましたよ」という「受任通知」が送付されることになりますが、この受任通知を受け取った債権者はそれ以降債務者本人に対して借金の返済を求めることが禁止されています。

そのため、貸付金の返済が受けられなくなった債権者は「債務者本人が返済できなくなったから保証人(連帯保証人、連帯債務者)であるあなたが支払いなさい」と保証人や連帯保証人、連帯債務者に対して借金の返済を求めることになるのです。

保証人や連帯保証人は契約上、主たる債務者が返済できなくなった場合には代わりに一括して返済することを契約で承諾していますから、保証人や連帯保証人、連帯債務者は債権者からの請求を拒否することができません。

仮に債権者から請求を受けた保証人や連帯保証人などが弁済できない場合には、その保証人や連帯保証人等も自己破産などの対応を取らなければならなくなる可能性も生じます。

ですから、仮に自己破産の申立を予定して弁護士や司法書士に依頼することが決まった場合には、早めに保証人や連帯保証人になってくれている人にその旨を伝えておく必要があります。

保証人や連帯保証人になってくれている人に事前連絡せずに自己破産の手続きを進めてしまうと保証人や連帯保証人になってくれている人が事前連絡なしにある日突然債権者から多額の債務を請求されてしまい生活に大きな不利益を被る可能性もありますので注意が必要でしょう。

(3)官報に氏名と住所、自己破産したことが掲載される

官報とは国が発行している新聞のようなもので、新しく法律ができた場合など国民に告知しなければならない重要な情報を掲載する冊子のようなもののことを言います。

官報は全国の官報販売所(裁判所などにある)で誰でも購入することができますし、インターネットで無料で閲覧することもできますから、官報に掲載された内容については(一応)全国民が知っているということになります。

(※乱暴に言うと「官報に掲載した内容については国は国民全員に知らせましたからね。官報に掲載したんだから後から知らないなんて言ってはダメですよ。」という既成事実を作るために国が発行しているとも言えます。)

自己破産したということは「経済的信用に問題がある」ということになりますから、「自己破産した人と取引をする場合は十分に注意する必要がある」という情報を全国民に知らせる必要性が生じますので、自己破産した人の情報も官報に掲載されることになります。

 

具体的には「氏名」「住所」「自己破産したこと」「自己破産の手続きが開始された年月日」「自己破産の免責が認められた年月日」などが官報に掲載されますが、生年月日や電話番号が掲載されることはありません。

もっとも、氏名や住所が掲載されるとはいっても、官報を購入してチェックしている人は通常いませんし、ネットで閲覧できるとはいっても毎日ネットで官報をチェックしている人もいないでしょうから、常識的に考えれば自己破産をしたことが知り合いや勤務先に知れてしまうことはないといえます。

ただし、闇金などの犯罪者集団は官報に掲載されている自己破産者の住所に融資のダイレクトメールを送付して借り入れを勧誘することがありますので(自己破産した人は信用情報機関に登録されて新規の借り入れが制限されるため闇金の勧誘に応じてヤミ金からお金を借りてしまうことが多いから)、そのようなチラシに惑わされないように注意が必要かもしれません。

(4)一定の職業に就けなくなる

警備員や生命保険の勧誘(募集員)などの仕事については他人の財産を預かることもある職種であることから、自己破産してから一定の期間はその仕事に就くことが法律上制限されています。

したがって、警備員や生命保険の販売員など自己破産の事実が就労に制限を及ぼす仕事については一定期間その仕事ができないことになるので注意が必要でしょう。