ホストにハマるキャバ嬢でも自己破産できるか?

ホストクラブに熱を上げて借金を重ねてしまった結果、その返済ができなくなりキャバクラなどの水商売で働いているという人は意外に多いのではないかと思われます。

このような人の中には、昼は本業の仕事で働いて、夜だけ副業としてキャバクラなどの水商売で働いている人も多いと思いますが、仮にそのような過酷な状況に陥ってしまっている場合には、労働時間の長さから体調を崩してしまい、夜の仕事のみならず昼の仕事まで休みがちになって返済に行き詰まるという負のスパイラルに陥ることも少なくないでしょう。

そのような場合、借金の額にもよりますが、最終的には自己破産で処理するしかない場合もあり得ます。

しかし、借金の原因がホストクラブなどいわゆる風俗営業法に関連する業態に起因するものである場合には、「浪費」を原因とした借金として自己破産の手続きで問題にされるケースもあるのが現実です。

では、ホストクラブなど風俗営業法に関連する遊興費のために借金を重ねた場合には、自己破産の免責(借金の返済が免除されること)を受けられなくなったりするものなのでしょうか?

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借金の原因がホストクラブなど風俗営業法関連の遊興費の場合は、「浪費」にあたる

借金の理由が、ホストクラブなど風俗営業法関連の業種で遊興することを目的としていた場合、その借金の原因は法律上「浪費」と判断されます。

なぜなら、ホストクラブなど風俗営業法関連の業種で遊興することは必ずしも生活に必要なものではなく、それを繰り返すことは自身の快楽を満たすためだけに資産を消費する生産性のない行為に他ならないからです。

借金の原因が「浪費」である場合には自己破産の免責は受けられないのが原則

借金の原因が「浪費」にある場合には、自己破産の申立を行っても免責(借金の返済が免除されること)を受けられないのが原則的な取り扱いです。

なぜなら、「浪費」という自己の快楽を満たすだけを目的とした借り入れを裁判所という国家機関が安易に免除してしまうと、倫理的に問題があるだけでなく健全な社会秩序を損なう恐れがあるからです。

自己破産の手続きを規定した破産法という法律でも、「浪費」は免責不許可事由として自己破産の手続きによっても返済の免除を受けられないものとされていますから(破産法第252条第1項4号)、ホストクラブなど風俗営業法関連の遊興費をねん出するために借り入れを繰り返したような場合には、たとえ自己破産の申立を行ったとしても、その借金の返済は免除されないことになるのが原則的な取り扱いとなっているのです。

【破産法第252条第1項】

裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする
第1号~3号(省略)
第4号 浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。
(以下、省略)

裁判官の裁量免責が受けられれば「浪費」が原因の借金が免除される場合もある

前述したように、ホストクラブなど風俗営業法関連の遊興費をねん出するために借り入れを行っている場合には、その借金は「浪費」を目的としたものにあたりますので、自己破産の申立を行っても免責不許可事由に該当し、免責(借金の返済が免除されること)を受けられないのが原則です。

しかし、これには例外があり、その「浪費」をするに至った事情やその他の事情などを考慮して裁判官が特に免責が必要と判断した場合には、たとえ借金の原因が「浪費」の場合であっても例外的に免責を出すことが認められています(破産法第252条第2項)。

【破産法第252条第2項】

前項の規定にかかわらず、同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。

この点、どのようなケースで「裁量免責」がなされるかは、個々の裁判官の「裁量」に委ねられるため必ずしも「裁量免責」が受けられる保証はありません。

しかし、仮にホストクラブなど風俗営業法関連の遊興費のために借金を重ねた場合であっても、その「経緯その他一切の事情」を裁判官に説明し、裁判官に「この人は免責を出してあげてもかまわないだろう」と思ってもらえる場合には、「裁量免責」によってその借金全額の返済が免除される場合もあり得ることになります。

裁量免責を受けるためにはどうすれば良いか?

以上のように、ホストクラブなど風俗営業法関連の遊興費のために借り入れを繰り返している場合には「浪費」と判断され「免責不許可事由」に該当することにより自己破産の申立を行っても借金の返済が免除されないのが原則ですが、裁判官が特別に免責を認めても良いと判断した場合には「裁量免責」によって、その「浪費」を原因とした借金全ての返済が免除されることになります。

この点、具体的にどのようにすれば裁判官から「裁量免責」を受けることができるかは、その「浪費」に至った事情や裁判官の信条等によって異なりますので、「こうすれば裁量免責が受けられる」ということを一概に説明することはできません。

しかし、この「裁量免責」を受けるためには、「浪費」のために借金をしてしまった「経緯その他一切の事情」を説明を裁判官に説明し理解を得る必要があるのですから、ホストクラブなど風俗営業法関連の遊興にのめりこんでしまった経緯や事情を上申書に記載したり、「浪費」のために債権者に多大な経済的損失を与えてしまったことを深く反省する反省文などを作成して裁判所に提出し、裁判官に浪費に至った事情等を理解してもらうのは最低限必要でしょう。

仮に「浪費」が借金の原因であっても、払えないものは払えないのですし、原則にしたがって「浪費」は一切免責にしないとしたのでは、免責を受けられない多重債務者が路頭に迷うだけですので、上申書や反省文で事情を正直に説明すれば、たいていの場合は裁判官の判断によって裁量免責が認められるのが実務上の取り扱いです。

ですから、借り入れにホストクラブなど風俗営業法関連の遊興費に関連する「浪費」がある場合には、それを隠して申立をするのではなく、「浪費」が原因で借り入れを繰り返したことを正直に申告し、そのうえで「裁量免責」を受けられるよう上申書や反省文で事情を十分に説明することが大切といえます。

なお、この点については自己破産を依頼する弁護士や司法書士が必要に応じて上申書や反省文の作成を指示すると思いますので、依頼する弁護士や司法書士と十分に打ち合わせをして対処することが必要となるでしょう。